上下の歯は何もしていない時は接触せず、会話や食事をする際に接触する時間を含め、1日16分程度 が正常、平均だと言われています。
上下の歯の接触と聞くと、「かみしめ」や「食いしばり」を思い浮かべる方が多いと思いますが、強い力でかみしめや食いしばりを行わずに、上下の歯が接触する程度でも、筋の緊張・疲労が生じるということで、TCH(歯列接触癖)という名前が考えられました。
近年、歯科界ではこの話題、治療法が広がりつつあります。
それは、今に至るまで「顎関節症」「不定愁訴(ある種の体の不調)」「噛み合わせが関与したむし歯、歯周病」に対する治療として、外科手術や大掛かりな補綴治療(歯を削って金属等を被せて噛み合わせを変える)、マウスピースなどの様々な治療が行われてきました。
しかし、一時的に良くなる場合はあっても、どれも長持ちせず、再治療を繰り返す、という事実がありました。
特に訴訟社会であり、医療よりもビジネスという意識の高いアメリカでは、トラブルが多々あったとのことです。
そこで、トラブル回避のためか大掛かりな治療には介入せず、元の状態に戻すことが出来る治療、もしくは患者さん自身の努力に重きを置く治療、と言ったペインコントロールや習癖指導が主流になってきたのです。
もちろん、一定の効果はあるからこそ広がってきたのでしょう。
一定の効果と言っても、この治療法は主観的データに頼りすぎで、客観的に判断するデータが少なく、信頼性には劣る報告です。
もう一つは、どんな歯科医でもすぐ実践できます。スキル、経験、設備がなくても、明日からでも簡単に行えます。
だから広まったのです。
しかし、元々、噛み合わせや顎関節に問題がある場合、まずそこをきちんと正常な状態に近づけるべきです。その上で習癖指導を行うのであれば意味があることでしょう。
まずは、きちんと噛み合わせの検査を行い、顎関節の状態やむし歯、歯周病、体調と噛み合わせが関係があるのか、を診断し、問題があればその原因を判断し、どう対策を立てるか、です。
その上で必要あれば習癖指導をするべきです。
生活をしている日中は、「歯が当たらないよう」注意すれば良いのです。これは意識すれば誰でも行えると思います。
しかし意識下ではない睡眠中はそれが出来ません。むしろ睡眠中の方が大きな力が掛かることが、明らかに分かっています。
オーストリア咬合学では、むしろストレス発散のために歯ぎしりはしても良い、と考えています。
歯ぎしりをしても大丈夫な噛み合わせなのか、が重要なのです。
TCHの習癖指導の代表的なものに、リマインダー、という「今日は歯ぎしりしないぞ!」と暗示をかける方法がありますが、そちらの方がよほどストレスになるのでは???と思います。
TCHの習癖指導は必要な場合がありますが、まず本来やるべき事の優先順位を考えましょう。