一般的な歯列矯正では見た目を最重要視し治療を行います。
歯が並ばなければ抜歯し、顎の位置がズレていれば、抜歯のうえ顎の骨まで削ります。
とても大変な事ですが、一般的な歯列矯正治療では当たり前でもある治療方針です。
小臼歯を抜歯すれば、下顎が後ろにずれる際に支障が出ます。顎の骨を削ればお口の中の容積が小さくなり、舌が辛くなったり噛みしめが増えます。
見た目を直すのはとても大切な事ですが、その為に機能を悪くしてしまうこともあるのです。
そして、もともと痛みや機能障害がある場合でも、それらを無視することも少なくありません。
この患者さんは見た目の改善を希望されていましたが、右顎の痛みも訴えていました。
噛み合わせ総合検査では、右の関節が緩く、後ろにズレていることがわかりました。
矯正治療後です。
一見、奇麗に歯並びを治しただけのように見えますがそれだけではありません。
下顎の位置を変えているのです。
治療前:前歯も噛み合っておらずきちんと機能していません。
治療後:術前の検査で、下顎は右の関節を2mm、左の関節を1mm前に出した位置が正しいと分かり、そこを目標に歯列矯正を行いました。
つまり見た目を良くするのと同時に、顎の位置も変えることで様々な機能改善もしているのです。
術前後の発音時の顎関節の動きを診たものです。
術前(左上の赤丸)は右顎を無理に前に出して発音している(喋る)のが分かります。
術後(右下の赤丸)では生理的な範囲の動きの中で無理なく発音出来ています。
顎にズレがなく、動きに無理がなければ、当然痛みも消失します。
矯正治療に限らず全ての歯科治療では、歯や顎の機能改善を最優先すべきです。